ストーリー
- 主人公アーシルが目を覚ました時、そこは全く知らない場所だった。
見たこともない場所、知らない人々、街並。
そこでアーシルは医師であるカーティスに出会い、助けられる。
記憶を失っているアーシルは優しいカーティスの申し出で一緒に暮らし始めることになるが、そこで毎夜不思議な夢を見るようになる。
『夢』の舞台となっているのは19世紀の船の中で、そこでの自分はカーティスと知り合いであり、共に旅をしているらしいのだ。
夢の中で、自分の知らない過去を持つ『アーシル』。
向けられる敵意と船全体を覆うなにか重く悪い予感に、アーシルは不安をかき立てられる。
そんな夢から目覚めれば、現実のカーティスが優しく包み込むように、まるでずっと昔からの想い人のように接してくれる。
当惑しながらも急速に縮まる互いの心の距離。
幸福に刻まれる『現実』の時間と、それに反比例するかのように徐々に翳ってゆく『夢』の時間。
『夢』は所詮『夢』だと思い込もうとしていたアーシルに、現実でも夢の中でもあからさまな侮蔑と憎悪を向けてくる霜波と云う青年が告げる。
「もしかしたら『現実』が『夢』かも知れない」
「夢と現実の境目は誰が決めるのでしょう?…誰が夢だと決めるのでしょう? どれが本当に現実かも分からないのに…?」
分からないまま過ぎていく時間に抗うことも出来ず、アーシルは二つの時間を行き来する。
そして、ある日を境に船の中の人間が現実に、現実の人間が船の中にも現れはじめる。
アーシルの『現実』と『夢』の境目は徐々に崩れはじめ、カーティスとの大切な『現実』が『夢』に浸食されていく中、
アーシルは漠然と自分に残された時間がもうあまりないと感じる。
やがて、ある月の眩しい夜にアーシルそのものに異変が起きる。
茶色であった髪が輝く銀色の髪に、美しい緑の瞳が血のように禍々しい紅い瞳に変わったのだ。
一体自分が何者なのか。どちらが現実で夢なのか。
そして『夢』の船が『月の眠る島』と呼ばれる地中海の孤島にたどり着いた時、
アーシルは、自分自身が隠した『記憶』と『約束』に対峙する。